はんぱねー 量産型ライティングの悪夢
半年前に仕事で大きな役職に就任したのですが、さまざまな事情から降りることになりました。理由や経緯に関してはここでは省略しますが、簡単に決断できたものではありません。
役職解任となり改めて自分のキャリアにおける転機を迎えたのですが、この半年間を通して感じたのは「自分でなければいけないことをやろう」ということです。いまは編集者・ライターとして別段名前が立っているわけではないですから、仕事を選ぶなんておこがましく聴こえます。事実、仕事のオファーに困らないほど生活が安定しているわけでもありません。私が意図するのは、自分にできることのなかから自分がやるべきことを取捨して「将来設計をする」ということです。そうすれば熱量や愛情を持って仕事の質を高めていくことできるからです。
数年前と違いウェブ媒体の需要が増え、制作の現場では驚くべきほどに安い単価で量産的に原稿の納品を求められることが多くなっています。「とりあえず、クオリティよりも本数重視でお願いします!」というクライアントからの要望に答えるには、マンパワーが足りません。さらにも低予算なのですから、その中からギャランティを工面できる人に仕事を依頼します。当然プロのライターにお願いできる金額ではないので、クラウドソーシングサービスなどで条件が合う人を探しますが、そのほとんどがアマチュアや素人です。アマチュアや素人のライターさんなりに、かなり頑張って執筆をしてくれます。が、肝心の編集的観点がない(もしくはそのトレーニングを受けていない)ために一貫性のない記事に仕上ってしまうこともあります。そしてそれを、結果、プロのライターが直すのです。
たとえば、キュレーションサイトなどでファッション記事があったとします。テーマが「夏に持ち歩きたい! クリア(透明)バッグ特集」だったとしましょう。アマチュアライターが選んだ、いくつかのクリアバッグ写真とともにポイントなどを解説したキャプションが付きます。5〜6個アイテムを選んだうち、なぜか最後に「ビニールやアクリル素材でできているけれど、クリアではないバッグ」が入っていたりするのです。マジかよ、と思いますが、現場ではこんなことが日常的に発生しています。(同じような経験をしたことがあるプロのライターさん、体験談をお待ちしております)自分でひと記事を書き上げるよりもずっと多くの時間をかけてアマチュアと素人の原稿を校正するのに、自分のライター名などクレジットは一切載らない悪夢。
そんなことを繰り返して行くうちに、ふと自分が完全に機械化していることに気付いたのです。上から下へ、右から左へ、言われたことをやる。頭では「はっ、なにこれ、プロのライターすら使い捨てじゃん!」と思いながら。企業に属する人なら会社の売上げのために、フリーランスなら自分の生活のために、多少無理がある仕事にも立ち向かう努力は必要ですが、極論、自分がやらなくてもなんとか回っていく仕事なら、ほかの人にお願いできませんか、と感じてしまったのです。ウェブ媒体、特にキュレーションメディアをお持ちの企業さんはライター育成制度を取り入れるか、予算の大幅見直しを検討した方が良いと思います。
アシスタントからいまにいたるまで、編集者としてのキャリアは6年目を迎えました。このタイミングで、今後どのように仕事と向き合っていくかを考えるのは悪いことではないような気がします。私は小学生〜大学生くらいまでのティーンや若者のことが得意ですので、今後編集者・ライターとしてはそれをメインにしていきたいです。この世代にまつわることでなにか知りたいことがあれば、ぜひひと声おかけいただければと思います。
写真は先日の撮影で訪れた堤防で見つけた、魚の鱗です。ボロボロになった自分とシンパシーを感じたので載せておきます。
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